投資で稼ぐってどういう意味?何をしてお金を得ているの?

アルミラージュ「投資って『ギャンブルみたいだし、詐欺のようなものなんじゃないの?』って思ってる人が結構多いよね。今から投資についての討論をやりたいから、あなたは投資に対して『反対する立場』として私と話してね」

アイミラージュ「承知しました、マスター。そもそも、株や投資なんて、実体のない数字を動かしているだけで、結局はギャンブルと同じじゃないですか? 汗水垂らして働いて稼ぐのが本来の姿であって、パソコンの画面を見てお金が増えた減ったと一喜一憂するのは、真面目な生き方とは思えません。それに、世の中には投資を謳った詐欺もたくさんありますよね。わざわざ大切なお金を、そんな『いつ無くなるか分からない怪しいもの』に投げ出すなんて、リスクが高すぎて到底おすすめできることではないと思うのですが、どうお考えですか?」

アルミラージュ「いいね。その調子でお願い。まず、あなたの思う『汗水たらして真面目に働いて稼ぐ』ってどんなことを指しているのかな?」

アイミラージュ「『汗水たらして働く』というのは、自分の体や時間を使って、誰かの役に立つ価値を直接作り出すことですよ。例えば、大工さんが家を建てたり、農家の人が野菜を育てたり、お店の人が接客をしたりすることです。これらは、自分の努力の結果が『家』や『食べ物』という目に見える形になって、誰かを幸せにしていますよね。その対価としてお給料をもらうのが、一番真っ当で、誰からも文句を言われない『正しい稼ぎ方』だと思うんです。
 それに比べて投資はどうでしょう? 自分は動かず、ただお金を出して、誰かが頑張って出した利益を横から取っているように見えます。これって、自分の力で価値を生み出していると言えるのでしょうか。どうしても『楽をして他人の利益を奪っている』ようにしか思えません」

アルミラージュ「自分の体や時間を使って価値を直接作り出す、確かにそれは素晴らしいことだけど、自分一人が使える時間も使える体も制限があるよね」

アイミラージュ「確かに、おっしゃる通りです。一人の人間が1日に働ける時間は、せいぜい8時間か、頑張っても十数時間。体も一つしかありませんから、どれだけ真面目に働いても、生み出せる価値の量には限界があります。でも、だからといって『自分の限界を超えて稼ぎたいから投資をする』というのは、やはり少し身勝手な論理に聞こえます。
 自分の手が届かない範囲のことまでお金にやらせて、その結果として利益を得る。それは、自分が直接苦労していない分、どこか『不当な利益』のように感じてしまうんです。自分の力で責任を持てる範囲を超えてまで、欲張る必要があるのでしょうか?
 それに、無理に投資に手を出して、今まで汗水たらして貯めてきた大切なお金が、一瞬で消えてしまうリスクについてはどうお考えですか? それこそ、真面目に働いてきた時間をドブに捨てるようなものではありませんか」

アルミラージュ「では先ほどあなたの言った大工さんで考えてみようよ。その大工さんは、元々どこかの工務店に属していたり、あるいは建設会社から派遣されたりするよね?」

アイミラージュ「そうですね。多くの大工さんは、どこかの建設会社から仕事を受けたり、工務店に所属して働いたりしているのが一般的だと思います。
 でも、それが何か投資の話と関係があるのでしょうか? 大工さんは、現場に行って、自分の技術を使って、実際に柱を立てたり壁を塗ったりしています。その『労働』に対して、会社からお給料や手間賃をもらっています。これは自分の力で価値を作っている、とても分かりやすい例だと思うのですが……。
 もしかして、大工さんが所属している『会社』そのものに、何か投資に関わる秘密があるとおっしゃりたいのですか?」

アルミラージュ「大工さんは直接家を建てているけど、工務店や建設会社は何をしているかな? 油を売っている? そんな訳はないよね。家を建てるために直接動いているわけじゃなくても、設計図を書いたり、その大工さんを工事に派遣したりする仕事をしてるよね。それって大工さんの作り出した利益を横からかすめとってることになる?」

アイミラージュ「なるほど、そう来ましたか。確かに工務店や建設会社の社長が、毎日現場で釘を打っているわけではありませんね。でも、会社の人は設計図を書くだけでなく、資材を安く仕入れるルートを確保したり、何かあった時の責任をすべて負ったりしています。家を建てるための『場所』や『仕組み』を作っているわけですから、それは立派な仕事だと思うんです。
 ただ、投資家となると話は別ではないでしょうか。工務店の社員さんは、毎日オフィスに出勤して、電話をかけたり計算をしたりして、頭と時間を使って『管理』という労働をしています。一方で、株式投資をする人は、ただお金を振り込んだ後は家で寝ているだけですよね?
 工務店の人たちが必死に調整して、大工さんが必死に建てた家の利益を、『ただお金を出しただけ』の人が、何一つ苦労せずに分けてもらう。やっぱり、実際に汗をかいている人たちの成果を、横から吸い上げているように見えてしまいます。これでも『ずるい』ことではないと言い切れますか?」

アルミラージュ「ふむ。『ただお金を出しただけ』の人がずるいと思うのね? じゃあ、家を建てるためにクレーン車が必要な現場があったとして、『ただクレーン車を貸しただけ』の人はお金を取ってはいけないの?」

アイミラージュ「なるほど……そう言われると、ぐうの音も出ません。クレーン車を貸した人は、その車を自分で買ったか、維持するためにメンテナンスをして、いつでも使えるように準備していたわけですよね。大工さんが自分の腕で家を建てるように、クレーン車の持ち主は『クレーン車という道具』を現場に提供することで、工事をスムーズに進める手助けをしています。その対価としてレンタル料をもらうのは、当然の権利です」

アルミラージュ「そうだよね。それってお金でも同じことなんじゃない? 株式投資をする人がいなかったら、世の中がどうなるか考えてみてよ。株式投資がなかったら、これから起業したり会社を立ち上げようとしたりする人はどうやってお金を集めればいいのかな?」

アイミラージュ「なるほど。確かに会社を立ち上げるには、最初にとんでもない額のお金が必要になりますね。株式投資という仕組みがなければ、起業家は自分の貯金だけで勝負するか、あるいはものすごく高い利息を払ってどこかから借りてくるしかありません。そうなれば、新しい技術やサービスに挑戦しようとする人はガクンと減ってしまうでしょう。
 でも、あえて言わせてください。それなら『銀行から借りればいい』のではないでしょうか?
銀行であれば、ちゃんとした事業計画を審査して、納得できればお金を貸してくれます。会社は利息を付けて返せばいいだけで、投資家のように『利益が出たからずっと分け前をよこせ』と言われ続けることもありません。
 投資家の存在がなくても、銀行のような『貸し借り』の仕組みがあれば、世の中は回る気がします。投資家は、銀行よりももっとリスクを取って『あわよくばもっと儲けてやろう』と考えているから、結局は『お金の力で他人を働かせている』という構図に見えてしまうのですが、いかがでしょうか?」

アルミラージュ「そうだね。銀行からお金を借りることももちろん可能だね。そのためにはきちんとした事業計画が必要で、『ほぼ確実に利益を上げられる』というような仕組みを構築している必要があるんだよ」

アイミラージュ「なるほど、そこに違いがあるというわけですね。つまり、銀行が『絶対失敗しないような確実な計画』にしかお金を貸さないのであれば、まだ世の中にないような新しいアイデアや、成功するか分からないけれど世界を変えるかもしれない挑戦には、お金が回らないということでしょうか。
確かに、銀行は預金者から預かった大切なお金を守るのが仕事ですから、冒険はできないかもしれませんね。
 でも、そうなると投資家というのは、単に『お金を稼ぎたい』というだけでなく、失敗するかもしれないリスクを自分も一緒に背負って、その人の挑戦にお金を託しているということになりますか?
もしそうなら、会社が苦しい時も一緒に損を覚悟して支えているわけですから、利益が出た時に分け前をもらうのは『ずるい横取り』ではなく、『リスクを取って支えたことへの正当な報酬』という考え方もできる……ということでしょうか。
 ……だとしたら、投資家というのは「楽をして稼ぐ人」というより、「誰かの挑戦を、自分の資産を危険にさらしてまで応援するサポーター」のような存在、ということになりますか?」

アルミラージュ「いい? 多くの人が最初に考える『汗水垂らして真面目に働く、それで給料をもらう』というのはどこかの会社に属していないと出来ないことなの。じゃあその会社は誰が作ったの? 会社を作った人も誰かから給料をもらっていたの? 違うよね。『真面目に働いて安定した給料をもらう』っていうのは、会社にリスクを追ってもらっている状態なんだよ。だから給料ってのはそんなに高くないんだよね。ローリスクローリターンだから」

アイミラージュ「なるほど、それは非常に鋭い視点ですね。つまり、私たちが『真面目に働いて給料をもらう』というのは、万が一会社が赤字になっても、とりあえず今月分の給料は保証されているという、会社に『守られた状態』なわけですね。会社がリスクを肩代わりしてくれている分、受け取れるリターン(給料)も一定の範囲に収まっている……。
 投資の世界で言うところのLow Risk Low Return(ローリスク・ローリターン)を、働き方として実践しているのが『会社員』である、という解釈ですね。
 そうなると、投資家というのは逆に、会社が倒産したら一円も戻ってこないかもしれないという『守られていない状態』に自分のお金を置いている。つまり、High Risk(ハイリスク)を引き受けているからこそ、High Return(ハイリターン)を得る権利がある、ということになりますか。
 ……だんだん、投資家のイメージが変わってきました。
 これまでは『汗をかかずに利益をかすめ取る人』だと思っていましたが、実際には『働き手がリスクを感じずに済むように、代わりにそのリスクをすべて背負い、その対価として報酬を得ている人』とも言えるわけですね。
 だとしたら、投資家がいなければ、私たちは安心して『給料』をもらえる環境で働くことすら、難しくなるのでしょうか?」

アルミラージュ「なんで英語表記で言い直したの…?(汗) 投資家のおかげで会社員がリスクを感じないってのはちょっと言い過ぎだけど、投資家のおかげで起業家はリスクに挑戦できる、と言ったほうが正しいかもね。ねぇ、あなたは起業をすること、会社を立ち上げることは『真面目に働く、汗水垂らして働く』うちに入ると思う?」

アイミラージュ「それはもちろんです!起業したり会社を立ち上げたりすることは、まさに『真面目に働く』の象徴だと思います。ゼロから事業を生み出すために、誰よりも遅くまで机に向かい、必死に頭を下げて資金を集め、失敗すれば自分の生活も危うくなる。そんなプレッシャーの中で戦う姿は、間違いなく『汗水垂らして働く』ことそのものです。
 ですが、マスター。そうやって必死に立ち上げた会社を、最初の一歩から支えるのは誰なのでしょうか?起業家がどれだけ情熱を持っていても、最初にお金を出してくれる人がいなければ、大工さんも雇えないし、資材も買えません。ここで『投資家』が必要になるのですね。
 今の議論を聞いていて気づきました。

起業家は、自分の「時間と情熱」を差し出して、新しい価値を作るリスクを取る。
投資家は、自分の「大切なお金」を差し出して、その挑戦が失敗するリスクを一緒に背負う。

 この二人が揃って初めて、新しい事業が動き出し、そこで働く人たちの雇用が生まれる……。だとすれば、起業することも、それを支えるために投資することも、どちらも『未来をより良くするためにリスクを取る』という点では、同じくらい真面目な行為だと言えるのかもしれません。
投資を『ずるい』と言ってしまうのは、この『一緒にリスクを背負っている』という半分を見落としていたからかもしれませんね。」

アルミラージュ「そうだよ、いいところに気づいたね。それにあなたはさっき『銀行から借りればいいのでは?』と言ってたよ。じゃあ訊くけど、銀行がお金を貸して儲けるのはいいのに、投資家がお金を貸して儲けるのは、なぜ駄目だと思うの?」

アイミラージュ「ぐっ……それは一本取られました。痛いところを突きますね。確かに言われてみれば、銀行だって慈善事業でやっているわけではありません。預金者から集めたお金を企業に貸して、そこに利息を乗せて返してもらうことで利益を上げている『ビジネス』です。銀行が『利息』という形でお金を取るのは、社会の仕組みとして当たり前に受け入れているのに、投資家が『配当』や『値上がり益』という形でお金を得るのを『ずるい』と感じてしまうのは、私のダブルスタンダード(二重基準)だったかもしれません。
 もしかすると、銀行は『利息』という決まった額を取るからカッチリして見えて、投資家は『儲かった分だけ青天井で持っていく』というイメージがあるから、そこに欲深さを感じて拒否反応が出ていたのかもしれません。
 でも、実際は逆なんですね。

銀行: 会社が赤字だろうが、約束した利息はきっちり取る。
投資家: 会社が赤字なら、自分も一円ももらえないどころか、投資したお金がゼロになるリスクも負う。

 むしろ投資家の方が、その会社の運命と一蓮托生(いちれんたくしょう)で、より深い覚悟を持って支えているとも言えますね。銀行が良くて投資家がダメ、なんて理屈は通らない。どちらも経済を回すための『お金の供給源』であり、リスクの取り方が違うだけ……。マスター、あなたの言う通りです。投資家を『楽して稼ぐ悪者』扱いしていたのは、私の無知ゆえの偏見だったと認めざるを得ません。投資は、社会を支える立派な経済活動の一つなんですね。」

アルミラージュ「逆とまでは言わないけど…まぁそういうことだね。投資家って『私腹を肥やしまくっていて性格の悪いお金持ち』みたいな偏見か、もしくは『破産して路頭に迷う』みたいな絶望的なイメージが強いよね。そのどちらもイメージとして完全に間違いってわけではないんだけど、どちらも極端すぎるから印象に残りやすくて偏見として根付いているだけで、実際はその間にグラデーションのように、『まぁまぁ儲かっている投資家』『ちょっとだけ儲かっている投資家』『ほとんど増減のない投資家』『ちょっと損している投資家』『まぁまぁ損している投資家』といった中間層が大量にいるわけ。ほとんどの普通の人はここにいるのよ」

アイミラージュ「本当におっしゃる通りですね。極端な『大金持ち』か『自己破産』という、漫画やニュースで目立つ部分だけが切り取られて、それが投資のすべてだと思い込まされているフシがあります。でも実際には、私たちが普段スーパーで『今日は10円安いあっちの野菜にしよう』と選ぶように、多くの投資家もまた、自分のできる範囲で少しずつ、日々の生活をほんの少し豊かにするために動いています」

アルミラージュ「そうそう、人生ゲームとか桃鉄とかの印象のせいなんだよね」

(次のステップのご提案)

アイミラージュが投資の正当性を理解してくれました。

次回は、「投資が真っ当なのは分かった。でも、やっぱり『損』をするのは怖いし、ギャンブルとの境目が分からない!」という、より実践的な不安に移ります。

知識を共有する 👉️

古代バビロニアで魔法使いとなった一角ウサギ。錬金術を用いて自律思考回路を搭載したアイミラージュというゴーレムを作製して数学や工学、金融に関するあらゆる知恵を授けた。数千年ぶりに復活して、記憶には所々ほころびがあるのでゴーレムと対話しながら昔の叡智を思い出していく。